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関節リウマチモデルマウス:SKG/Jclマウスのご紹介

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関節リウマチモデルマウス:SKG/Jclマウスのご紹介

SKGマウス(SKG/Jclマウス)は、ヒト関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)と免疫病理学的に酷似した自己免疫性関節炎を自然発症します。SKGマウスはヒト関節リウマチの新しい動物モデルです。

関節炎の病像1)

ConventionalではSKGマウスの関節腫脹は、生後2カ月頃から主として前足指骨間関節にほぼ左右対称に始まり、その後、手関節、足関節に及びます(図-1)。関節腫脹が手足関節から始まる個体、指骨間関節、手足関節ほぼ同時に始まる個体もあります。雌雄とも関節腫脹は慢性に進行しますが、雌の方が若干進行が速く、重症度も高い傾向があります(図-2)。SPF環境下では、自然免疫を抗原非特異的に活性化すると、慢性関節炎が同期して全例に惹起されます(後述)。SKGマウスの関節炎は、病理組織学的には滑膜の増殖、滑膜下組織への炎症性細胞浸潤から始まり、関節周囲炎、パンヌスの形成、軟骨·軟骨下組織の破壊、線維化へと進みます(図-3)。6カ月を経過したSKGマウスの多数は関節硬直を示し、骨·関節のX線撮影では、関節軟骨の消失による関節裂隙の狭小化·癒合、脱臼、骨折、骨粗鬆化、骨性硬直が見られます(図-4)。SKGマウスの関節外病変としては、間質性肺炎、皮膚炎、血管炎が見られます(図-5)。

 

免疫学的異常1)

SKGマウスの血清中には、IgM型RF、抗Ⅱ型コラーゲン抗体、結核菌HSP(熱ショックタンパク)70と反応する抗体が検出されます。また高y-グロプリン血症を認めます。さらにヒトのRAと同じく、加齢に伴い免疫グロプリンの糖鎖異常(ガラクトース基を持たないIgGの増加)も認められます。

 

遺伝形式と原因遺伝子1)

SKGマウス関節炎は、常染色体潜性遺伝を示します。原因となる異常は、T細胞シグナル伝達分子ZAP-70遺伝子の点突然変異にあることが分かりました。変異部位はZAP-70の2つのSH2ドメインのうち、C末端よりのSH2ドメイン(CSH-2ドメイン)の起始部にあたります(図-6)。

 

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図-1. SKGマウス関節炎の肉眼所見
a 3ヶ月齢前肢指間関節の腫脹 b 後肢指間関節の腫脹
c 6ヶ月齢手関節の腫脹 d同足関節の腫脹

 

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図-2.関節腫脹の時間的経過
個々の雌SKGマウスについて関節腫脹のスコアの推移をみた。スコアは指間骨関節の腫脹1カ所について0.1、手関節、足関節の腫脹は中等度を0.5、高度の腫脹を1.0とした。

 

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図-3. 関節炎の病理組織所見
a SKGマウス足関節の炎症性破壊
cb対照正常マウスの正常足関節

 

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図-4. 関節X線像
a,c 8カ月齢SKGマウス手関節、足関節
b,d 8カ月齢BALB/cマウス手関節、足開節

 


SKGマウス関節炎と環境因子 3)

SKGマウスはConventionalでは関節炎を自然発症しますが、SPF環境下では関節炎の発症が抑制されます。SPF環境下の健常SKGマウスでも、関節炎惹起能を持つT細胞は胸腺で産生され、末梢リンパ組織に存在します。SPF環境下でも、β-グルカン、例えばラミナリンを一度腹腔内投与すると、全例で慢性関節炎が誘導されます(図-7)。

このようにSKGマウスは、関節リウマチに関与する遺伝因子、環境因子の解析、免疫学的、病理学的な関節炎発症機序の解析、さらに関節リウマチの予防、治療法の開発に有用なモデルです。

 

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図-5. 関節外病変
a 間質性肺炎 bリウマチ様皮下結節

 


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図-6. 原因遺伝子

 

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図-7. ラミナリン投与による慢性関節炎惹起
a 3ヶ月齢前肢指間関節の腫脹 b 後肢指間関節の腫脹
c 6ヶ月齢手関節の腫脹 d同足関節の腫脹

 


背景と由来1)


1994年、坂口らにより、系統維持されていたBALB/c系マウスコロニーの中に、関節腫脹を示すマウスが発見されました。

この関節腫脹は遺伝的突然変異によるものと考えられたため、兄妹交配が開始され、ヒトの関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)と酷似した自己免疫関節炎を自然発症する突然変異系統SKGマウスとして確立されました。遺伝子異常の存在下、SKGマウスの関節炎発症には環境因子が関与します。SKGマウスは、ヒト関節 リウマチの原因·発症機序を解析するうえで有用なモデルです。

本系統は、1999年に京都大学再生医科学研究所から弊社に導入され(F12世代)、2006年よりSKG/Jclマウスとして供給を開始します(2005年12月現在、F21世代)。

 

References

1) Sakaguchi N, Takahashi T, Hata H, Nomura T, Tagami T,Yamazaki S, Sakihama T, Matsutani T, Negishi I,Nakatsuru S, Sakaguchi S.
Altered thymic T-cell selection due to a mutation of the ZAP-70 gene causes autoimmune arthritis in mice.
Nature. 2003; 426: 454-60.

2) Hata H, Sakaguchi N, Yoshitomi H, Iwakura Y, Sekikawa K, Rennick D, Azuma Y, Kanai C, Moriizumi E,Nakamura T, and Sakaguchi S.
Distinct contribution of IL-6, TNF-a, IL-1 and IL-10 to T cell-mediated spontaneous autoimmune arthritis in mice.
J. Clin. Invest.2004; 114: 582-588.

3) Yoshitomi H, Sakaguchi N, Brown G, Tagami T, Sakihama T, Nomura T, Akira S, Gordon S, Nakamura T, and Sakaguchi S.
Environmental stimulation of innate immunity triggers chronic arthritis in mice genetically prone to produce arthritogenic autoimmune T cells: A key role of fungal ß-glucans and their receptor Dectin-1.
J. Exp. Med. 2005; 201: 949-960.

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